会長コラム

会長コラム ~同人誌『飛翔』に投稿したコラム集~

銘木倉庫のオープン

待望の銘木展示場が7月上旬に完成し、7月18・19日お披露目展示会を催すことができた。

府道に面した、第二倉庫前の空地を活用して、増築することに決めたのは昨年の秋、仕事の手隙の時に基礎工事を始め11月には基礎が完成したが、具体的に構造材の墨付け、刻みにかかれたのは、コロナ禍で仕事が甘くなった今年5月に入ってからであった。6月23日重量のある通り柱や太鼓梁をクレーン車を使って建て方をした。

同じ建てるならと、簡単な倉庫建築ではなく在来軸組構造とした。土台・柱・梁・間柱は国産桧松材、見上げると屋根組は6本の太鼓丸太梁、入り口鏡柱は桧上小節の18㎝角柱、鴨居梁は下面に3本鴨居溝を掘った幅24㎝、背は40㎝の丸みのある太鼓梁が正面にどんと構えている。入り口3枚引き違い建具はトラックが出入り出来る高さ2.4m・幅1.2m、重量50㎏超える3枚引き大型建具。枠材は無垢桧上小節、上部ガラスと杉面皮半割り板を腰下に張り詰め、趣のある建具を自社大工が手作りした。

展示場は府道に面した部分を高さ1.8m・巾90㎝ガラス7枚連窓とし、表から視えるようにした。内部は柱筋違い、小屋組が視えるように内張りをせず構造表しとした。これらの材木を全て在庫材で賄えたのは、今日まで廃業した工務店や銘木店から声がかかり譲り受けた銘木や材木、また年に数回通っている岐阜の材木市で買い揃えたものである。

欅大黒柱や欅梁、赤松板、桧耳付板、天然秋田杉一枚板、霧島栂盤、栃板、楓、銀杏盤、鉄刀木(タガヤサン)、辛夷(こぶし)、百日紅(さるすべり)、梅壇、タモ、シオジ、名栗柱、槐(えんじゅ)柱、桑柱などの銘木などが倉庫に積み上がっていた。材の上に材を重ね積みにしていた置場から、一枚一枚立て掛けて見られるようにする、銘木展示場の設置は、お施主さんに見てもらえ、選んでもらえる様にすることが長年の課題でもあった。

オープン前に、樹種の判らない変木を調べるために、若い頃に銘木屋で修業された取引先の木材店会長さんに、診ていただいた。会長さんは「よくこれだけ集めはりましたなぁ」とおっしゃりながら、小丸太が並んでいる所に来て、「これは百日紅、こっちは辛夷やなあ」と、検分された。木肌がささくれて、深く彫り込まれた青黒く堅い丸太について、「こうゆうのを『しゃれ木』と業界では云うんや。粋人が値を付けてくれるのでなんぼとはいえへんな」とおっしゃる。川や地中から引き上げた杉倒木の埋木、神代杉と教えていただいた。 近年はこれらの銘木は需要がないので値打ちがないなあと嘆いておられた。

お披露目展示会は2日間で20人も来られたら成功だと思っていたが、30組50人近くが来られ、とくに若い人が結構多かった。入るなりいい木の匂いがすると感嘆された。売れたのは看板用の欅耳付き一枚板、テーブルにされる栃板、カウンターにされる社木杉耳付き厚板、欅立て看板完成品、杉磨き丸太などであった。また、今後の銘木購入や、住宅建築の相談もお聞きすることが出来た。

木材の機能性や効率を重視した複合合板や加工材が出回っている今日、本来の自然な銘木や無垢材が見なおされているのではないか、伝統ある本物の建物が求められているのではないかと感じた。

今後の改修は、第二倉庫に天井ホイストクレーンの設置や製材機の案内レール据え付け、埃をかぶり古材のようになった材のプレナー掛け削り直し等をしていく。

今回、同時に第一倉庫に金物専用倉庫を設置し、中二階の置場を拡張、階段の付け替え、無垢フローリングと羽目板の整理、入り口シャター取替え、第二倉庫は構造材専用として整理し、第三倉庫の不要材の処分、整理をすることが出来た。

築40年超えた静市作業場の一大リフレッシュは、コロナ禍で現場仕事が延期になったり、新規受注減少で現場大工・作業員が手隙になったことで実現したが、今後の作業効率に資するものであり、伝統建築を求める客層に自信を持って静市作業場を見ていただける。

2020年7月25日

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