会長コラム

会長コラム ~同人誌『飛翔』に投稿したコラム集~

京都の活性化提案

 この前、「京都経済の発展をめざして」と銘打った会合に参加した。京大教授の基調報告のあとの討論を聞いていて、一向に前向きな提案がないので、思いつくまま次のように発言した。
 「京都を活性化するとか明るくすると云うならば、高齢化による都市の中の限界集落、人が住まなくなった地域の解消をはからなければ、根本的な解決にはならない。そこで無住家屋をいかになくすか、空き家の解消をはからねばならない。そのためには空き家にしている所有者に対して保有コストを掛けることが解決の端緒になる。」と発言した。
 京都市の人口146万にたいして世帯数は68万、住宅総数は78万戸ある。しかし空き家は11万戸と 14%に昇る。清水寺のある東山区では20.3%と高く、学区によっては25%と、5軒に1軒は空き家となっている。
 そのような空き家は、近年増加傾向にあり、空き家の増加は人口減を招き、地域ににぎわいを消し、地域の安全を脅かす恐れがある。
 京都市は空き家解消に向けた本格的な対策をと、本年度から初めて調査に乗り出した。最も空き家率の高い東山区六原地域では空き家のうち、賃貸や売買の対象として不動産市場に流通しているのは5%のみだった。
 なぜ、このように空き家が多く発生するのか。その原因に所有者は売った後、貸した後にも責任感を感じる、「誰にでも貸して町内でトラブルが起きたら困ると思うから」と云われる。また、将来子供世帯が住むとか、今の住居が狭いから荷物置場にしている。貸しても出ていってもらうときにトラブルになるのが嫌だから空き家にしている。相続で共有所有者となり、仏壇置場になっている。貸すにも改修費用がかさむと云った事情が見えてくる。
 今の所有コストは小規模土地には弱者救済の見地から非常に低くされている。本来なら土地にかかる固定資産税は固定資産税評価額の1.4%であるが、200㎡(60坪)以下は評価額の6分の1に軽減されてる。都市計画で市街化区域内に課税される都市計画税も評価額の3分の1で税率は0.3%となっている。
 たとえば固定資産税評価額坪30万円で30坪の土地の本則の税金は、
30万円×30坪×1.4%+30万円×30坪×0.3%=15.3万円のところ、軽減措置で30万円×30坪×1/6×1.4%+30万円×30坪×1/3×0.3%=3万円となる。
ざっと5分の1である。ちなみに固定資産税評価額は土地時価の半分ほどである。
 建物は空き家の場合、築年数が相当経っている場合が多いので減価償却されて低税額が多く、たいした額にはならない。空き家にしていても所有コストが低いことが安易に空き家を生んでいる要因といえる。小規模住宅なら年間数万円の固定資産税で、やっかいな事を背負い込むよりも空き家にしているのではないか。
 そこで、「空き家の固定資産税や都市計画税は本則の税額にして、居住している家屋の土地軽減を現在6分の1のところ10分の1にするとよい。」と提案した。空き家からは5倍の税額を徴収し、そのかわり居住家屋からは本則の16.6%課税標準(6分の1)から10%に引き下げるのである。 この提案に会場からは拍手がおこった。
 様々な理由で空き家として放置している所有者は、5倍に跳ね上がるコストに耐えられず、賃貸にだしたり、売却したりするために家屋が不動産流通にまわるだろう。そして一刻も早く新しい住人が来ることを願って民間家賃相場が下落し低所得時代の、住居を求めている人々が住まいを得ることが出来る。
 また、現状では改修しなくては適さない家屋の改修工事が発生し町並みは綺麗になり、火災や災害の心配がなくなるだろう。荷物置場にしていた家屋は、荷物を整理して人の住まいとなるだろう。そうして段々と空き家が無くなっていけば、地域に人が増え賑わいが還ってくる。富裕層がセカンドハウスとして購入するマンションの空き室も無くなり、幽霊マンションも影を消 すだろう。 老人の比率が高い地域ほど空き家が多いことが解消されれば地域は若返る。
 また、遅々として進まない耐震改修も促進されるだろう。2009年京都市土地統計調査によると、耐震改修工事をした持ち家は3.3%の1万1390戸である。耐震診断をしたことがある持ち家は10.9%にとどまっている。国・市も住宅の耐震改修への緊急経済対策支援として、従来からの耐震改修補助金60万円、京町家は90万円に最高30万円を上乗せ補助とし、空き家の所有者も助成対象者として使えるようになった。11万戸の空き家に人が居住することになれば、危険な家屋はそれだけ減少することになる。
 ほとんどの空き家が無くなれば、10%に引き下げた居住住宅土地課税の減収はどうなるか。バブル時を思い起してみると、投機目的で購入した土地が値上がり待ちで更地が市内いたるところに出現し都市砂漠といわれた状況に対処するために、特別土地保有税がかけられた。低容積率利用の場合、取得価格の3%課税である。固定資産税評価額ではない3%は大変な重課である。見てる間に更地は2段式駐車場に様変わりをした。税制が値上がり待ちの有効活用しない土地取得にブレーキをかける狙いで、投機目的の土地取引を牽制したのである。弊社も資財置場に取得した土地がその対象になり、急遽、看板を建て工作物の確認申請を出し完了検査を受け、活用土地として課税を免れた事がある。このように、税制が誘導すれば、空き家解消に有効に働くのである。
 なによりも5軒に1軒が空き家ということは行政効率からみても異常である。効率優先の時代にたとえ空き家であっても、満遍なく様々な都市の行政サービスは及ぶのである。
 住民が戻れば地域は賑わい安全が増し、住民税も増え税収の均衡はとれると思うのだが、どうだろうか。
 京都市では倒壊家屋の代執行をこの前にしたが、その前に空き家の税金を上げていく方が良いのではないか。空き家問題が解消したら、居住している家屋の土地にかかる税を10分の1(― 6.6%)に減額した場合の全体の税収は、新しい住民の所得課税で、大体釣り合うのではないかと思っている。

人見 明

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